ひよこ9.4切符!!

こちらは主に日常の話とノートの切れ端などをup。創作活動のPRなどは「まみの木荘3.20号室」に分けてあります。

夏の思い出、鎮守の森の犬太郎。

ええと、noteのこちらの記事が思いの外売れて、サポートなども数件いただきまして、ありがとうございます。収益金は創作に関する道具代などに当てさせていただきますね。
 
 
よし…おまけを書くか…と思ってつい4000字ほど書いてしまったんですが、もともと8000字強の記事の有料ゾーンのおしりに4000字さらにつけるのって、嬉しくもなんともないよなぁ…。皆さん目が痛くなるだろう…ということで、こちらはフツーに公開して、有料記事にはイラストを描きおろすことにしました。
 
有料一回やると大変ですね、頂いたお金に対する姿勢を問われるのだと、毎回思います。
 
 
 
というわけでボツにしたおまけエッセイの方です。こちらも読みやすく書けてると思います。
 
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今この書き出しだけをケータイに打ち込んで、何を書くかは決めてない。でも多分いいのが書けると思う。
 
わたしはてんでモテなかったけど、ごく稀にネーネーのように、一瞬で通じ合って、見てるとうれしさが込み上げてきて、お互い顔を見合わせてついつい笑ってしまう。というような、ベストパートナーみたいな異性が、たまに来る。
 
わたしの人生でネーネーと、小学4年の時一緒に日直をやったコ。あとはまぁ内緒…。計3人…いや、4人かな?つまりほぼいない。
 
何か恋の話つながりで書こうか…。と思ったんだけど、わたしは元々自分の恋の話は苦手なんで、熱でもないととても話す気になれず…。と思ったら、恋ではないんですが、思い出のベストパートナーがいたのを思い出した。
 
わたしが勝手に名前をつけたヤツ。たった一回しか遊べなかったけど、今でも思い出すモフモフの…。
 
"ヤツ"と二人、田舎の神社で駆け回れて嬉しかった、ある日の夏の話をすることにする。
 

 

 

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わたしは子どもの頃、ばあちゃんちが好きじゃなかった。まぁどこもたいして居場所はなかった。特に学校は地獄で、夏休みも一人で遊んでいた。わたしのトモダチは、空の雲や、壁のシミ。それでもまぁ、誰かに表面で合わせるよりは、ずっと楽しかった。
 
なので、どこも窮屈だったけども、田舎に帰ると、自然がうれしいだろ?真っ黒になって遊ぶのが楽しいだろう?と押し付けられるので、ウンザリだった。自分の嬉しいは自分で決めるよ盆暗ども。と思っていた。
 
わたしにとって田舎は、大きなテーブルに田舎臭い山盛りの飯とピンクとか青のカンテンが乗せられ「おっきくなったねぇ」と言われるだけの行事だった。
 
当時から鼻がよかったので、肥やしの臭い、嘘つきの臭い、大人のオスの臭い、鼻が曲がりそうだった。加えて車酔いがひどいので、出来たら家でカップ麺でも食って留守番させてくれたらいいのに…と毎回呪った。
 
特に色々散々な目にあった後だったので、スケベなおじさんは一瞬で嗅ぎ分けるようになった。わたしは人が考えてる事がなんとなく臭いや匂いで分かる犬みたいな鼻がついていた。スケベなおじさんなんか山ほどいるけど、ここの臭いは違ってた。
 
まぁこれは文意と外れてしまうんで、何かの時にでも。とにかくわたしは物陰で吐いたりした。小学校3年ぐらいだったろうか。
 
耐えられないので、わたしはお母さんに「近所の神社で遊んでていい?」と断って、一人で抜けて来てしまった。肥やしの方がマシだった。
 

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ジーワジーワと蝉時雨。田舎の正午、一人で遠く12時のサイレンが響く。わたしはお弁当にクリームパンを持って来ていた。
 
平べったいような地形の、普通の小さな神社の境内。鎮守の森というやつだった、鳥居をくぐると急に涼しくって、少し不思議な世界にこれた気持ちになった。
 
わたしは何か竜神様でも出てくるワクワクの展開になればいいのになぁ。と思いながら、濡れ縁で足をぶらぶらさせながら、クリームパンをかじった。
 
鳥居をくぐった時点で、もうすでにワンダーな世界に足を踏み入れてしまっているので、
(何か起こった時用に、食料は節約しないと…)
ネバーエンディングストーリーの冒頭のバスチアンのようなことをいいつつ、一瞬でほとんど食べたように思う。
 
ネバーエンディングストーリーはこの年齢ではまだ観れてないんだけど、多分、物語を書くような人は、みな、どこかしら主人公のバスチアンに似てて、わたしもそっくりそのまま、そんな感じの子どもだった。
 
≪ハフハフハフ…。≫
 
ふと気づくと目の前に白くてでっかいモフモフの犬がいた。神の使いとかにしては脱走癖があるヤツみたいで、首輪の綱を引きずっていた。芝にしてはデカイな…と思った。

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(c)tomon  こんな感じだった。

わたしはそれまでの人生、猫と暮らすのは何度も夢見て来たんだけど、犬はノーマークだった。お手とか出来たら楽しそうだな…と思ってたぐらいで、どう接すればいいか全然わからない。
 
パンが欲しいのかなぁと思ったんだけど、最後の食料をちぎって渡しても食べなかった。お腹が減ってないにせよ、どうもすごく躾がいいみたいだ。わたしは試しにおずおずと手の平を犬に向かって差し向けた。
 
ワフ!という嬉しそうな声とともにわたしは一つ夢が叶った。「お手」だった。わたしと犬太郎の友情が(わたしの中で勝手に)芽生えた瞬間だった。
 
そこからの時間はまるで夢みたいにすぎた。わたしにとって青天の霹靂のような出来事だった。夢にまでみた違う種族の動くトモダチなんである。
 
わたしは違う世界のトモダチとすぐに仲良くなるとこはあったけど、時計の精も、壁の模様の王様も、空駆けるドラゴン達も、もう少し精神的な繋がりの友人なんで、棒を投げたらすぐに取ってくるとか、そういう展開になりようがなく、犬スゴイ、いや犬太郎がスゴイんだ…と震えた。
 
犬ともともと暮らしてる方は、何でこの人こんなに普通のことで、打ちのめされてんの?と思うと思うんだけど、もともと猫のしもべとしてよく訓練されていて、犬という種族にノータッチで暮らしてきた人種としては「なにこの猫じゃないヤツ!?」「スゴイ!」「なんでこんな逆のことをしないの!?」出来た古女房かなんかなの!?」ってなる感じだ。
 
いや、猫は猫でいいんだ、ラクだし、踏まれるとうれしいし、そのまんまでいられるんで。
 
話を戻すと…。犬太郎は賢くて、なんでも一緒に遊んでくれた。お手もお代わりもちんちんも取ってこいも一気に全部叶った、スゴイ。スゴイ!こいつは100年に一度の天才かなんかなんじゃなかろうか?!
 
「冒険に出よう!」
≪ワフ!≫
神社の境内には、気づけば、竜神さまを付け狙う、悪鬼どもが彷徨っていた。倒さねばならない。そう、わたしは護衛隊長なのだから…!
 
「何やつ…!」(※口に出していいたい日本語)ふん…石ころか…。
?!これは石に化けた敵…!――
 
――――敵の倒し方はこうだった。敵の目の前で、犬太郎に棒を投げて「取ってこい」をするのだ。
 
流麗に犬太郎が取ってこいを決めると、敵が「グワァー!スゴイ!強い!素晴らしい!」と華麗さに打ちのめされるという感じ。ちなみに雑魚はお手で倒した。
 
回復魔法は神社の水の柄杓や、空の青。風に吹かれて笑う事、元気になることはいっぱいいっぱいあった。犬太郎はわたしの冒険にずっと付いて来てくれた。
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ずっと一緒に遊べたらいいのに…。気づけば夕方、田舎の夕は涼しいんだな…と思った。
 

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「まみー。帰るよ!」
現実世界への扉の鍵を持った…家族だった。
 
本当に帰らないとだめ?という押し問答ののち、わたしは犬太郎の首に抱きついてしくしくと泣き始めた。
 
 帰ったら家とかいういつもの生活の詰め合わせだ。学校に帰ればひどいこと言ってまたいじめられる、ここにいられたら、犬太郎と二人カッコよく、私は笑ってられるのに…。
 
今日どんなに楽しかったか思い起こすと、これが泡みたいに消えちゃうんだ、また辛い毎日が始まる。おかしいな、今日はやっと生まれてよかったって、思えたのに…。胸が張り裂けそうだった。現実世界は惨めでしかなかった。
 
わたしはもう絶対絶対嫌だと思った。そんな生活に連れ戻そうとするこいつらこそ魔物なんだ、ヤダヤダ、犬太郎とここに住むんだ、嫌だ嫌だ、ここで二人でずっと不思議の国の護衛隊長でいるんだ。ヤダヤダ、ワァアア。
 
犬太郎の首をずっと抱いて、ずっとずっと泣き止まなかった。嗚咽は近所中に鳴り響き、親戚のやつらは、まぁまぁ…とみんなまるでパンダでも見るみたいなツラをして笑った、お父さんが見兼ねて、わたしをひょいと抱えて、車に乗せようとしたけど、なんとか体を捻って、犬太郎に抱きつきに行ってしまう。逆効果だった。
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これはもう泣くだけ泣かせてやろう…ということになったみたいで、それからしばらく泣き続けた。犬太郎はクゥンとずっとおとなしくして、たまに涙をペロリと拭ってくれた。目が溶けそうなほど泣いた。
 
だいぶ日が傾いて来た。少し落ち着いて来た。わたしは諦めて車に乗った。
発車して窓から身を乗り出し、ずっと走って着いてくる犬太郎にいっぱいいっぱい手を振った。また涙がこみ上げた。
 
「犬太郎ーー!またねーーー!」
「絶対絶対また遊ぼうねーー!」
 
ちぎれそうな程手を振った。犬太郎はだいぶ追いかけて来た。犬太郎の帰路が心配になるあたりで、諦めたようにふと立ち止まり、ぽつんと道の真ん中、わたしを見送った。
 
「よっぽど楽しかったんやねぇ…」帰りの車内、お母さんが笑って話を聞く。姉ちゃんは「私も外に出ればよかった…」と今日の集まりがいかに退屈だったか、ぶつくさ続けた。しばらく車に揺られてると、乗り物酔いが始まるので、すぐにわたしはダンゴムシみたいにコロンと横になった。
 
楽しかった不思議の国の大冒険。うとうとしてると犬太郎の姿。わたしは寝ぼけながらいっぱい楽しかったよ。ありがとう。また遊ぼう。ありがとう。って何回もお礼を言った、犬太郎はワフワフ嬉しそうだった。またね、いつか絶対遊ぼうね。
 
「着いたよ」お母さんの声、気づくと真っ暗だった。
お父さんが車から荷物を下ろす途中「ワッ」と叫ぶ。
 
「まみ!犬がついて来てるぞ!」
 
ガバっと飛び起きる。どこ?!どこどこ?!どうしよう、家に帰さなきゃ…。ダメだったらわたしが引き取って…でも、こんないいヤツだから、きっと家族が心配してて…。わたしがオロオロして探し回るのをみて、お父さんは笑いながら「なーんてな」とペロっと舌を出してみせた。
 
面白いとでも思ってるんだろうか?!おっきくなったらジジ捨て山にでも埋めてやろうか?!わたしはいまだにこの時のお父さんを恨んでいて、数十年経った今でも忘れてない。
子どもの一生懸命を大人はすぐからかう。大人も一生懸命にやってることを、茶化されたら嫌なのと同じなことをいい加減理解して欲しいと思う。
 
犬太郎はわたしのこと、どう思ったろう?ベストパートナーって思ってくれてたらいいのにな…といまだに思ったりする。
 
 

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あれから、わたしは犬太郎みたいなトモダチが欲しいなぁって何回も思うんだけど、やっぱり犬はどちらかというと、飼い主の責任が外に向かいやすく、吼えないようにしつけられるか?とか、散歩は…とか考えてると…どうも…。
 
 
わたしのようなものぐさは、猫に踏まれて「あんた誰だっけ…?」というような顔をされるというご褒美にあずかり、涙を流してありがたがりながら暮らした方がいいのだと思う。猫も元論大変なんですが、散歩がないのは、やっぱり助かる…。
 
 
でも、犬、いいなぁ。動物はみんなかわいいですね!
 
 
心の奥底、ぱちぱちと爆ぜる、小さく煌めく昼間の花火みたいな思い出。魔法がかかったみたいだったある田舎の一日のお話。
 
なんとかまとまったので終わる。
 
ありがとうございました。
 
 
 
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